どうもこんにちは。
秋も深まって参りましたね。

ちなみに私は松茸よりも、ピコピコ派です。
ピコピコって何だよって思いました?
うちの地元は、えのき茸の事をピコピコと呼びます。
いや・・・正確には私の家だけかもしれません。


さて第三話ですが、秋の夜長にダラダラ書いていたら
いつのまにか長くなりました。
読まれる方はご注意を。私には簡潔にまとめる力なぞ無い。

それでは・・・


~~~はじまりはじまり~~~

「キラキラ風車塔」
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それは雲を突き抜けるような高さを誇る、プクランド大陸屈指の観光地。

オープン当初は観光客であふれ、展望台へのエレベーターは常に行列が出来ていたという。
周りの敷地は整備された公園になっているため、今も親子連れに人気があるようだ。

私はひとまず、メギストリス領から一番近いキラキラ風車塔を目指していた。
観光地ではあるが、今は全盛期も過ぎているだろう。
特に目立つ行動をしなければ怪しまれる事はない。


グー・・・ギュルルルル・・・
あぁ、お腹減ったな。そういえば今日は何も食べていない。

私はかばんの中に忍ばせてある会心バーガーを食べることにした。
先日お試しモンスターとしてお世話になった、あの冒険者が持たせてくれたものだ。

確か奥のほうに入れたはずだ・・・
バッグの中に手を入れたその時、突然黒い影が私の周りを取り囲んだ。

??「そのバッグを渡せ」
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つか「・・・!?誰?」

??「あぁ?聞こえねえのかぁ?渡せって言ってんだろ!」

つか「何ですか突然!残念だけど私は金目の物なんて持ってませんよ」
  「どうせ三流盗賊団ってとこでしょ?だっさ・・・」

??「んあああああ!?金なんかに用はねえ!」
  「分かってんだぞ?その中に大事な大事な物が入ってるって」
  「あんたの命とも言えるアレがなぁ!」

つか「えっ・・・!」

こいつら、ただの物盗りじゃない。
私が酒場から薬を持ち出したのを知ってるのか。
これは極秘で譲り受けたはずなのに、なぜ・・・

いや、まてよ?
奴等は薬の事だとは言っていない。

つか「ああ、入ってるよ。これから使おうと思ってね」
  「あんた達にも分けてあげるよ」

??「お?おう・・・。なんだ、素直じゃねえか」
  「さっさと出しやがれ」

ガサゴソ・・・
つか「あ、あったあった」
  「じゃあ半分づつね。あーお腹すいた♪」

つかじょは、会心バーガー☆1 を食べた!

??「何だこれはぁ!?ふざけんなゴルァ!!」

・・・今だ!
奴等が怯んだ隙に武器を装備し、私は襲い掛かった。

3対1だろうが関係ない。
正直、薬を奪われたら私はおしまいだ。
ここで戦うしか選択肢は無いだろう。

つか「うおおおおおお!」

??「うぁ!まて!おい、おめぇら押さえろ!」

手下の奴等に回りこまれてしまった。

抵抗するも、ボコボコにされて身動きが取れない。

ゴフッゴフッ・・・苦しい・・・。
こんなところで命尽きるなんて!!!

薬・・・守ら。。な。。きゃ。。。。。こば。。や。。し。。
ごめ。。ん。。。。。。
・・・・・・・・・・・・・・・

「つかじょ!!!!」


え!この声は・・・!?
振り返ると、息を切らしながら駆け寄る男の姿が見えた。
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・・・シャオラ!?

つか「シャオラ!!あんたどこにいたの!?」
シャ「うるせぇ!話は後だ!とりあえずこいつら倒すぞ」
つか「・・・OK!」

私は力を振り絞り立ち上がった。
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だいぶ苦戦したものの、なんとかとどめを刺すことが出来たようだ。

??「お前、、、裏切り・・者・・・め・・・」
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つか「裏切り者って何だよ」
シャ「・・・。さ、早く帰ろう。傷の治療をしないとな」

~~~~

暫くはシャオラの家でお世話になることにした。
一人では不安だったので、遠慮なく居候させてもらっている。

シャオラには、隔離施設を出てからの事を説明した。
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私の足取りをどこで知ったのかと聞いてみたら
風車塔の近くを散歩していたら私を見つけた。と言っていた。


シャオラはいつもこんな調子だ。
ヘラヘラしていて、フラフラしている。
何を考えているのかイマイチ分からないタイプだが、
きっと私はそこも含めて惹かれているのだろう。

私の変わり果てた姿を見ても、何も言わなかった。
薬についてもそうだ。既に飲んだのかどうかも聞いてこない。

関心が無いのだろうか。それとも聞きづらいのだろうか・・・。


住宅村に戻り数日が経った。
朝食の片付けをしていると、突然シャオラが外出すると言ってきた。

仲間と金策に出かけるそうだ。
私はこの姿ゆえ外出は出来ない。留守は任せて!と、笑顔で送り出した。
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シャオラの姿を見るのも最後かもしれないな・・・。


私はバッグから白い箱を取り出した。
シャオラがいない所で使おうと決めていたのだ。
あれから一切、姿に変化は見られない。
恐らくこれが完全体なのだろうと思うが、失敗した時の事を想像すると恐怖で手が震える。


深呼吸して、ゆっくりと箱を開けた。

・・・・・・!?
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中身が・・・ない!!

箱の中には包み紙だけが残されており、薬が見当たらない。

どうして。。。いつ盗まれた!?
盗賊団にはカバンを触らせていないはずだ。おかしいぞ・・・。


ミタ「あなた、ほんと鈍い性格してんのね」
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つか「・・・え?」

この家のメイドだ。
私がここに来てから一度も会話をしたことがない。
シャオラがジョークを飛ばしても、ピクリとも笑わない女、ミタ。
最初に会った時には本当にビックリした。私のコピーかと思うほど外見がソックリなのだ。
私と唯一違うのは、仕事を完璧にこなしている事ぐらいだろう。

つか「鈍いって、何が・・・ですか?」
ミタ「他人を信用しすぎなのよ」

彼女は視線を合わせず、独り言のようにつぶやいている。
そしてポケットから何かを取り出した。

ミタ「2階を掃除してたら、ベッドの隙間からゴミが出てきたの」
  「あなた、これ捨てておいて」

ゴミぐらい自分で捨てろよ・・・。
そう思いながらも、逆らうと怖いのでしぶしぶ受け取った。
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渡されたのは一枚の書類だった。

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【ターゲット】つかじょ ドワーフ ♀

【依頼①】
・オルフェア住宅村にてウィルス投与→意識が無いことを確認→指定場所に収容
※ウィルス、地図・鍵などは当日お渡しします


【依頼②】
・メギストリス脱出までの監視→脱出後、人目につかない場所で所持品を没収
※恐らく没収時に抵抗するため、多少の戦闘は覚悟してください


【成功報酬】
・1000万G
※所持品と交換という形でお渡しします
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「計画書」と題されたその書類には、末尾に依頼主・請負人のサインがされていた。

依頼主の欄には見覚えのある筆跡が。

「シャオラ」

私は書類に書かれたその名前をじっと見つめていた。
ついさっきまで仲良く食事をしていたはずの彼の名前だ。

騙されていたのか。私をまものにさせて、どうするつもりだったのだろう。
でも、私を助けたのはシャオラだ。するとこの計画書は一体・・・?

ミタ「請負人の連中が明け方尋ねて来て、旦那様と揉めてたわ」
  「裏切り者だとかなんとか、罵声が飛び交ってたわよ」
  「旦那様は多分、あの連中とどこかへ行ったんじゃないかしら」

つか「あの盗賊団が来てたんですね。じゃあ薬を盗んだのはやっぱり・・・」

ミタ「薬を盗んだのは私よ。旦那様に頼まれて、私が預かっておくように言われたの」
そう言って彼女は、一枚のカードを私に渡した。
預かり所の会員証だ。

ミタ「薬は預かり所に入ってる。面倒な事に巻き込まれるのは避けたいから預けておいたの」

つか「ミタさん、それって私にバラしちゃダメなんじゃ・・・」

ミタ「もういいの。私は今日限りでお暇を頂くことにしたので」 注)お暇=辞める


彼女はそう言うと、二階へ戻り黙々と荷造りを始めてしまった。


私も急がなければ。
薬を取り返さないとどうしようもない。
シャオラの真意は全く分からないが、あの人に薬が渡ると良くない事が起こりそうな気がする。

~~~~

預かり所の扉を開けると、ごちゃごちゃと色んな物が詰め込まれていた。
整理整頓という言葉とは無縁の彼らしい使い方だ。

薬はビニール袋に無造作に入れられた状態で置いてあった。
よかった・・・。
私はそれを手に取り、ホッと胸を撫で下ろす。

扉を閉めようと手をかけたのだが、奥の方にドス黒い液体が入った瓶を見つけた。
これは何だろう?

気になった私は受付の人から物品リストを出してもらい、確認する事にした。
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消費アイテムの預かり数は2個。

一つ目は「抗ウィルス剤」 
先ほど取り出した物だ。

二つ目のアイテム名に目を落とす。
その名前に私は心臓をえぐられるような衝撃を受けた。
「まものウィルス」

そう、シャオラが私に感染させたウィルスだ。
どうしてここに!?ウィルスはまだ存在していたというのか・・・。

~~~~

家に戻ると彼女は既に身支度を終わらせているようだった。

彼女の背中に向かって話しかけた。
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つか「ミタさんはウィルスの存在を知っていたの?」

ミタ「・・・私がYESと答えたら、あなたはどうするつもり?」

つか「協力してほしいことがあるの。お礼はするから」
彼女は振り返って私の顔をじっと見ている。

私は預かり所から引き出したウィルスと1000万Gを見せた。

つか「これだけあれば、しばらく不自由なく暮らせるわよ」

ミタ「ふふっ」
真顔で笑っている。やっぱり不思議な人だな。

彼女は私からウィルスの瓶を取り、テーブルに置いた。
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ミタ「まわりくどい話は好きじゃないわ」
  「この瓶の中身、半分ぐらいしか入ってないわよね」

私は表情を変えず、無言で頷いた。
そう、液体は使われた形跡があるのだ。

それが何を意味しているのかも、私がこれから起こす過ちも、
全て見透かしているような瞳で彼女は私を見つめていた。


~~第四話へ続く~~